ここは夢園荘NextGeneration
Wonderful Street
十二月(一)
私−鷹城卯月は、ノルンで行われる夢園荘のクリスマスパーティーの打ち合わせをするために夫の高志さんと長男の和樹にお店を任せて早瀬家を訪れていた。
そう、打ち合わせをするために……。
「それで、どうしてそういう話になるの!?」
私は力の限り両手でテーブルを叩き、目の前の二人に向かって言う。
「あまり興奮すると体に悪いよ」
「生理中?」
平然と言う空と恵理。
私は一人興奮してるのも体裁が悪いので、深呼吸をし無理やり気持ちを落ち着けるとその場に座りなおした。
「私はパーティーの打ち合わせに来ただけなのに、どうして脱線するの。しかも……その……そんな……」
思わず言いよどんでしまう。
「恥ずかしがる年でもないでしょ。新婚じゃあるまいし……でも未だに『さん』付けで呼んでるんだから新婚気分?」
空はお茶を飲みながらからかい口調で言う。
「良いじゃない! それに恵理だって同じじゃない」
「私?」
話を振られた恵理はきょとんとする。
「恵理の所は良いの。永遠の新婚カップルだから」
「ほめられちゃった」
「いえ……褒めてないと思うよ……」
思わず深いため息をついてしまった。
打つ合わせをしているはずの私達だったけど、空の「千佳にも弟か妹がいたほうがいいかな?」と言う発言から夫婦の夜の営みまで話が発展していた。
そしてあまりそういう話が好きでは無い私がターゲットになるのにさほど時間はかからなかった。
「とにかく、そういう話は夫婦の間だけのことであって……」
「恵理は最近どう?」
空は私の言葉を遮るように恵理に聞く。
「毎日たくさん愛し合ってるよ。昨日だって……」
そこで恵理は夕べのことを思い出したらしく頬を染めて幸せそうな微笑を浮かべる。
「ほら、恵理はこれだけオープンなんだよ」
そんな彼女の様子に空は再び私を見る。
「そ、それは恵理が特別なの!」
「まったく、かたいんだから」
「かたくて結構です」
私はそっぽを向く。
「頑固者」
「ふん。こんなことで頑固者と言われてもなんともないですよ」
「それで和樹君を生んだ時って和沙ちゃんの時よりも楽だった?」
「間が空いてたし、あまり変わらないような……ってなんなのそれ?」
つられるように空を見る。
「ほら、私たちの周りで二人目を産んだ娘っていないでしょ。だから唯一の経験者にどうなのかなって」
「唯一って澪さんもそうなんだけど」
「澪さんか……私、あの人とはあまり接点がないんだよね」
空が苦笑を浮かべる。
苦手にしているわけではないだろうけど、確かに空と澪さんが話をしている姿は見たことが無いような気がする。
「あの、私も二人産んでるんだけど……」
いつの間にか現実世界に戻ってきていた恵理がおずおずと言う。
「恵理の場合は双子でしょ。間を空けてと言う意味で二人目はどうかな?と言うことだから」
「なるほど」
空の説明に恵理は納得したのかぽんと手を叩いた。
でも良かった。
子供を二人産んでいるということで恵理を忘れていたなんて言えないから。
「卯月」
恵理の声にはっと彼女を見る。
「忘れてたでしょ」
「え……そ、そんなわけ無いじゃない」
「そう? それなら良いけど……」
にこやかに言う恵理に私はやばいと思い空を見るが、彼女はただただ苦笑するだけで助け舟を出す気は無いらしい。
忘れてたよ、この娘の特技を(涙)
「えっと……ごめんなさい。忘れてました」
ここは素直に謝ったほうが良いと判断。
「別にいいよ〜♪ 私としても二児の母と言われるよりも幼な妻のほうがいいもん」
今、さらっととんでもないこと言ったような気も……。
「さて話を戻すけど、どうだった?」
頃合を見て空が話を戻す。
「どうだったと言われても……確かに和沙の時に経験してる分、和樹の時は気持ち的楽だったけどそれだけだよ」
「そうなんだ。やっぱりそんなものなのかな」
「でも空って共働きでしょ。夜だって遅いときもあるみあいなのに大丈夫なの?」
横から恵理が疑問を口にする。
「千佳がしっかりしてるから大丈夫だって」
「と言うか、私が思ったのは子作りする時間あるのかなぁて」
「あ、それは問題なし。私も聖も仕事場は個室だから、鍵をかけておけば大丈夫」
「なるほど〜」
こちらもさらりと爆弾発言をするし……。
それに納得する恵理も恵理だし……なんか頭痛い……。
「そういえば恵理って夏樹さんが会社に泊まりこんでるときはどうしてるの?」
「どうしてると言われても、別に何もだよ。時々冬佳が抱き枕になってくれてるだけ」
「夫が不在のときは娘と……」
「私、そんなシュミ無いんだけど」
恵理は空に冷たい視線を送り、空はすぐにやばいと感じたのかすぐに謝る。
「あは、ははは……冗談だって。でも一人の時って寂しいでしょ」
「まあね……でも我慢した後だと激しくなっちゃうの」
「そうなんだ。すごい?」
「すごいよ」
二人の話を黙って聞いてると、なんとなく主婦の会話に思えなくなってきたのは何故なんだろう。
でも……。
私はちらっと恵理を見る。
楽しそうに語る彼女をなんとなく羨ましく感じた。
確かに最近、ご無沙汰だし……。
今夜、迫ってみようかな……巫女装束に身を固めて……。
そんなことを考えてると視線を感じ顔を上げると、恵理と空がじ〜っと私を見ていた。
「な、なに?」
「いえいえ、何か楽しそうなことを考えているようだったので。ね、恵理」
「私たちの話に触発されて、今夜あたり巫女服を着て高志さんに迫るんじゃないかなぁと予想」
「な、なんでそこまでわかるのよ!!」
そこまで言って私は慌てて手で口を押さえるが後の祭り。
「さすが恵理。正解だね」
「まかせてちょうだい」
「でも巫女服とは……」
「夏樹さんから聞いた話だと高志さんって好きらしいの」
「へぇ〜。よかったね卯月」
「よくな〜〜いっ!!」
たぶん隣の夢園荘まで聞こえるぐらいの大きな声を出した。
すごく泣きたくなってきたよ〜(涙)
夜。
まどろみの中で同じ布団に横になる高志さんを呼ぶ。
「どうかしたのか?」
「私と巫女、どっちが好き?」
「はぁ?」
「答えて」
「卯月だよ」
「うん」
その答えを聞いて私は高志さんの腕の中で眠りについた。
<おまけ>
冬佳「大きな声だね。あれって卯月おばさんでしょ」
和沙「お母さんってば……」
楓「そんなことよりも冬佳〜ここってどうなってるの〜(涙)」
春香「冬佳〜私も〜〜」
和沙「あ、私も……」
冬佳「あんたたちはぁぁ〜〜一度教えたところぐらい覚えてないさい!!!」
冬佳の声と小気味良い三つの音が夢園荘に響く。
和沙の部屋で学期末テストに向けて勉強する彼女たちは今日も平和だった。
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<あとがき>
絵夢「世間はもうすぐクリスマスだと言うのに私は何をやってるんだろうか」
恵理「まぁまぁ気にしない気にしない。というか何ヶ月ぶりの新作?」
絵夢「ざっと5ヶ月ぶりってところかな?」
恵理「いろいろとあったもんね」
絵夢「まぁね……(遠い目)」
恵理「それで、ひさびさの新作は私達3人の話〜♪」
絵夢「なんにしても大人は動かしにくい」
恵理「お〜い」
絵夢「そろそろ話を先に進めないとと思いながらも閑話休題だからなぁ」
恵理「そ、そうだったの」
絵夢「次あたり、話を一気に進めてしまおうかなぁと思ったり思ったり」
恵理「大丈夫なの?」
絵夢「それをやると自動的に予定話数よりも少なくなるけど、いいかなって」
恵理「はぁ……」
絵夢「と言うことで次回もどうぞよろしくです」
恵理「まったね〜♪」