ここは夢園荘
エピローグ
私は夏樹さんとキスした後、気がついたと知らせを受け来たみんなと一緒に帰った。
翌日、髪の毛が夏樹さんの血でとんでもないことになっていることに気づいたので仕方なくと言うか、願いも叶ったこともあって、お見舞いに行く前に美容院で髪の毛をばっさり切ることにした。
その後、夏樹さんの所に行ったら凄く驚いてたっけ。
しかもその原因が自分だと知ったら、何度も謝って凄くおかしかった(^^)
それから数日経って、夏樹さんが退院する前の夜。
私は冬佳さんの夢を見た。
もしかしたらあれが「夢枕に立つ」と言うものだったのかも知れない。
……………………………………………。
寝ていたはずの私は気がつくと何もない場所で知らない女の子と向かい合わせで立っていた。
「あ、あの……」
「初めましてこんばんは、恵理さん」
とまどう私に彼女はごく普通に挨拶する。
「こ、こんばんは」
仕方なく返す。
「ご心配なく、ここはあなたの夢の世界です。どうしてもあなたとお話がしたくこうして干渉させていただきました」
「夢の世界……ってあなた誰なの?」
夢の世界といわれてああなるほどと思い少し安心したが、すぐにそこに干渉したこの娘が誰なのか警戒した。
「そんなに警戒しないでください。私は早瀬冬佳。夏樹の妹です」
「冬佳……さん?」
「はい」
言われてみればどことなく夏樹さんと似ている気が……でもどうして?
「一言、兄のことをどうぞよろしくお願いしますとどうしても言いたくて」
「そう……なんですか……」
思わず使い慣れない言葉遣い……。
夏樹さんの実の妹とは言え彼と恋仲だった人……緊張するなって方が無理だよう(;_;)
「恵理さん、私のことは気にしないでください」
「でも……」
「私はすでにこの世にはいない存在です」
「だけど……」
「恵理さんが私のことを気にしていては、それでは兄が悲しみます」
「夏樹さんが……悲しむ……」
「はい、今を生きてる人の気持ちを大切にして欲しいんです」
「わかりました。でもすぐには無理かも知れませんけど……」
思わずクスッと笑ってしまう。
それにつられるように冬佳さんも微笑む。
「それでは改めて、兄のことをどうぞよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ」
私達は握手を交わす。
と同時に冬佳さんの姿がぼやけてきた。
「兄と……お兄ちゃんと幸せになって下さい」
そして、その言葉を最後に消えた。
その瞬間見えた光るもの……涙?
「……冬佳さんごめんなさい。そしてありがとう。絶対に幸せになるからね」
気づくと私も涙を流していた。
きっと自分のことで気に病んでいた私を心配で出てきてくれたんだと思っている。
と同時に私は自分のことを認めてもらえた気がして嬉しかった。
そして、いろんな事のあった忘れることの出来ない秋が過ぎ、クリスマス正月バレンタインと楽しく騒いだ冬が過ぎ、季節はいつの間にか春になりました。
ここ夢園荘にもしっかりと春が来ました。
住人全員無事進級進学して、私もついに高校3年生です。
城田美亜、里亜……共に高校3年生。17歳。
夕飯を作っている美亜の後から何かを持って里亜が近づいてくる。
「み〜あちゃん、新しい真っ白なエプロン買ってきたんだ」
「そうなんだ。ありがとう」
「で、すぐ着けてほしいなぁ」
「今?」
「うん」
「仕方ないなぁ」
美亜がエプロンを変えようと取り、里亜から新しいエプロンを受け取ろうとする。
が里亜はエプロンを渡さない。
「?」
「だから、裸エプロンしてほしいの」
「………は!?」
「だから、は・だ・か・え・ぷ・ろ・ん」
「な、なんでそんなこと……」
「してくれなかったらもっと酷いことするぞ」
「ひ、酷い事って……」
「内緒ぉ。されたくなかったら裸エプロンして、私もするからぁ」
「里亜ちゃん、そう言う問題じゃないよぉ」(;_;)
……この二人は相変わらずみたいです(-_-;;
でも裸エプロンかぁ……やってみようかな。
陽ノ下空……高校3年生。17歳。
なにやら机に向かって真剣に絵を描いている。
「よし、出来た」
描いていた絵を目の前にかざす。どうやら新しい服のデザインを描いていたみたい。
「夏樹さんのデザインには遠く及ばないけど、これらなきっとみなもも可愛く見えるはず」
そこで紙を机の上に置く。
「……夏樹さ〜〜〜ん。絶対に恵理から救い出して見せますからね〜〜〜」
あのねぇ(-_-;;
ったく……私と夏樹さんが結ばれた途端、自分の気持ちに気づいたらしく、デザインが出来るたびに「どうですか?」と見せに来る。
いい加減、諦めて欲しいんだよね(怒)
陽ノ下みなも……高校1年生。15歳。
「姉さん! いい加減諦めたらどうですか」
「だって……」
「相思相愛の二人の邪魔するような真似ばかりして、私は妹として恥ずかしいです」
「でもでもでもでもでも……」
「でもじゃないです。そう言ってここ追い出されても知らないですからね」
「みなもちゃ〜〜ん」(;_;)
みなもちゃん、もっと言っちゃって〜〜。
そう言うわけでみなもは空と同じ高校に進学。
なんでも家以外での姉の普段の態度が心配だと言うのが進学の理由みたい。
ホント、空のお母さんしてるんだね(^^;
葛城唯菜……高校2年生。17歳。
部屋の中に唯菜と知らない年下っぽい男の子……。
男の子は凄く緊張している様子。
「あ、あの葛城さん……」
「唯菜って呼んでください」
「はい、では唯菜さん……良いんですか?」
「何がですか?」
「だってここ女子専門のマンションとかじゃ……」
「違いますよ。確かに女の子しか住んでませんが、管理人さんは男性ですから」
「そ、そうなんですか……」
「はい」
そして唯菜はニコリと微笑んだ。
なんでもこの春からつきあい始めたみたい。
出会いはノルンでラブレターを貰ったんだって、今時そう言うのもありなんだね。
でも彼の年を聞いたらなんと14歳の中学3年だって……唯菜ってショタだったの(^^;;
榊由恵……高校3年生。17歳。
休み時間中。
「恵理……」
「何?」
「何で噂消えないかな?」
「さぁ?」
「さぁってあんたのせいでしょ!!」
「分かってるなら何で聞くの?」
「聞かずにはいられないからだよ」(;_;)
机に泣き崩れる由恵。
「人の噂も49日って言うし」
「それを言うなら75日!」
「それは誤差って事で……でも去年の秋頃やった事が年越した今になっても引っ張てる何てね、関心関心」
「あんたがラブレター来るたびにやってるからその度にリセットされてるの」
「ああ、そう言うことか……いい加減冗談だって気づいても良いのね」
「あんたとまともに話してるとこっちがおかしくなるよ」
「いや〜〜そんなに誉められると照れちゃうな」
「誉めてないし、照れるな〜〜〜!! う〜〜私って不幸」(T_T)
いつものように由恵は私のおもちゃです。
ちなみに噂というのは私と恵理がレズだと言うことなんですよ(^^)
でもこれって夏樹さんには内緒ね。
水瀬葉月……20歳。
早川澪……夏樹さんと同級生(年齢書こうとしたら怒られた(;_;))
「だから葉月、ちょっとだけで良いから会ってみない?」
「澪さん、私はまだそんな気は……」
「とか言ってる間に亜沙美みたいになっちゃうよ」
「そこで亜沙美さんを出すのは少し可哀想な気が……」(^^;
「とにかく会うだけ会ってみたら。年も18歳って年下ですっごくまじめでからかい甲斐のある男の子なんだって」
「あ、あの……」
「向こうに写真を見せたら気に入ったみたいで、そのことをちょっとつっこんでみたら顔を真っ赤にして、本当に可愛いんだよ」
「は、はぁ……じゃ、会うだけですよ」
「そうこなくっちゃ。ちょっと電話借りるよ」
「え……い、今からですか!?」
「善は急げって昔から言うじゃない」
「だからって心の準備が……」
「まあまあ、後は私に任せなさいって」
旦那さんの転勤の都合でこの街に引っ越してきた澪さんが、葉月さんのところに良く来ているみたい。
でもこれって良くある近所の世話焼きおば……(中断)……お姉さんだよね(;_;)
鷹代高志……26歳
水瀬卯月……高校3年生。17歳。
「卯月、こいつを3番テーブルに頼む」
「は〜〜い、あなた」
夏樹さんを待つ昼下がりの午後。
注文の品をテーブルまで持っていく卯月。
半年以上やってるだけあって手慣れたもの。
「卯月、凄いね。すっかり奥さんなんだね。『あなた』って」
「そ、そんなこと無いよぉ」
顔を真っ赤にして否定する。
「ただのナンパ防止なだけだから……」
だんだん語尾が小さくなる。
なんか可愛い。
「で結婚いつするの? 早くしないと出来ちゃった婚になっちゃうよ」
「で……出来ちゃったって……恵理、何言ってるの!!」
さらに顔を真っ赤にする。
面白いかも(^^)
「あ、あなたからも何か言ってくださいよ」
鷹代さんは卯月に言われコップを拭く手を止め何か考えている様子。
「やっぱりそうなる前に入籍した方が良いよな」
「「……………」」
普通そう言うことを冷静に言う?
「鷹代さんってば冗談ばっかり」
「結構マジだけど」
「「……………」」
私は乾いた笑い、卯月はさっきよりもさらに顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「あなた……そう言う話は私が高校卒業してからにしようよ……」
か細い声でつぶやくように言う卯月だった。
とまぁ、ごちそうさまって感じの二人。
なんとなく出来ちゃった婚確実のような気がするなぁ(^^;
でも私も人のこと言えないか(照れ照れ)
水瀬睦月……中学3年生。14歳。
ノルンのカウンターでじっと卯月を見る睦月。
「睦月、どうしたの?」
「私もお姉ちゃんみたいな彼氏が欲しいなって思って」
「そ、そう……」(^^;;
「どこかにいれば良いんだけどな」
と店内を見回す。
「私の春はまだ遠いか」
溜め息を一つ付くと、飲みかけの紅茶に再び口を付けた。
睦月ちゃん、きっと春は来るよ〜〜。
だって唯菜にだってノルンで春が来たんだから(^^)
桜まなみ……小学5年生。10歳
「おかあさんおかあさんおかあさん………よし」
小声で呪文のように繰り返し練習している。
「どうしたの、まなみ?」
帰ってきたばかりなのか買い物袋を下げた母親が後に立っていた。
「あ、え、えっと……なんでもないです」
「そう?」
「はい……」
母親は首を傾げながら台所に戻っていく。
「はぁ……また言えなかった……」
大丈夫だよ、まなみちゃん。
きっといつか言えるようになるから、ファイトだよ(^^)
川原亜沙美……26歳。
閉店間際のノルン。
「タカ、夏樹、いい男、紹介して」
「「は?」」
「澪はとっとと結婚した。あんた達も可愛い奥さんをGETした。なんで私だけいないわけ?」
「「ははははは」」
互いに顔を見合わせ乾いた笑いを交わす夏樹さんと鷹代さん。
「職場にはいないのか?」
夏樹さんが本日何杯目かのコーヒーを飲みながら聞く。
「いることはいるんだけどね……」
「問題でも?」
「その子、私よりも年下なのによ」
「年下って言っても3歳ぐらいだろ。だったら問題ないだろ」
「そうかな?」
「そうだよ、タカだってそう思うよな」
「え? ああ、そうだな。俺達なんて9歳も離れてるもんな」
「それに姉さん女房ってはやりみたいだぞ」
「そうか……そうだよね。よ〜〜っし明日から頑張っていくぞ〜〜〜!!」
手を振りかざしエイエイオーをする亜沙美さん。
後で夏樹さんに聞いた話だけど、本当にGETしちゃったんだって。
行動力があると言うかたくましいと言うか(^^;;
そして私と夏樹さんはと言うと………。
布団の中でもぞもぞ。
「ふにゃ……」
隣にあるはずのぬくもりが無くごろごろする。
「あれ?」
私は上半身を起こすとそこを見た。
「あれ、いない……」
まだぼ〜とする頭で首だけ動かして辺りを見回す。
「????」
”カチャ”
寝室のドアが開く。
「朝だぞ〜〜って起きてるか」
「あ、夏樹さんのおはよぉ」
「おはよ。朝ご飯出来たから、早く支度してご飯食べないと遅刻するぞ」
「え、うん……」
夏樹さんの言うことに頷く。
私は夏樹さんが退院してからしばらくして、301号室から夏樹さんの住む101号室に引っ越したの。
他の部屋がワンルームに対して101号室は管理人室も兼ねてることもあって2LDKなんです。
たとえ101号室もワンルームだとしても半同棲状態にしちゃったけどね(^^)
でも問題が一つ。
朝飯だけはどうしても作れないの。
夕飯はもちろん、休みの日は昼食もちゃんと作ってるんだけど、朝が非常に弱い私に無理みたい。
だからいつも夏樹さんが作ってくれてるの。
ごめんね、夏樹さん。
だけど夏樹さんと一緒に暮らすようになってから、毎朝起こしてくれるから時間ぎりぎりというのは無くなったんだ……えばれる事じゃないか(^^;
「ったく……。いつまでもそんな格好でいると風邪引くぞ」
「そんな格好……」
私はゆっくりと視線を下に動かし、自分の格好を見る。
………裸……。
「きゃっ!」
慌てて布団を引き寄せ、身体を隠す。
「早く言ってよぉ」
今ので一気に目が覚めた感じ。
「今更、何を恥ずかしがってるのか……」
「う〜〜〜だって恥ずかしいんだもん」
「ま、初々しいのは良いって事かな……早く支度しろよ」
「う、うん」
夏樹さんが部屋から出ていった後、一人残った私はベッドから出て支度を始める。
その時、左手の薬指にはまる指輪に目が止まった。
「今日もファイト、だね」
私はそう指輪につぶやいた。
Fin
<あとがき>
絵夢「そう言うわけで最後までお読みいただきありがとうございました」
恵理「みんな、私の活躍どうでした? これからも私は元気でファイトでいきます」
絵夢「一応全員ハッピーエンドという目標が達せられたかな? ここでハッピーエンドにならなかった一部の人も話を用意してあるのでそちらをお楽しみにです」
恵理「一部というと、空とか空とか空とかですね」
絵夢「あと睦月とかみなももいるだろ」
恵理「ん〜〜〜そだっけ」
絵夢「結構根に持ってる?」
恵理「気のせい」(-_-)
絵夢「ま、いいか。と言うわけで『ここは夢園荘』は今回で終わりですが、これからもどうぞよろしく」
恵理「またどこかで会おうね」
絵夢「それでは」
恵理「いち、にぃ、の」
絵夢&恵理「まったね〜〜〜〜」