NOVEL



Wind Saga
第一部 GENESIS
序章



20世紀も終わろうとしていた頃。
世界中で特殊な『力』を持った者達が生まれ始めた。
彼らはその『力』を『フォース』と呼び、使い手である自分たちを『フォースナイト』と呼んだ。
その力は強大で、力を持たぬ者達からは驚異以外の何者でもなかった。
しかも各々、『フォースソード』と呼ばれる、気のエネルギーを物質変換した武器を持っていた。
その為、力を持たぬ人たちは生後間もないうちから力が判明した時点で国家的規模で『フォース狩り』と呼ばれる行為が行われた。
それにより集められた者達は抹殺または力に対抗する為の兵器開発の実験体として殺されていった。
そんな中で力に目覚めるのが比較的遅かったため、捕まらなかった少年がいた。
彼はその残虐の行為を目の当たにし、世界中のフォースナイトに呼びかけ同志を募った。
そして彼は自らカイザーと名乗り全世界に対し宣戦布告をする。
これが長きに渡る戦争の始まりだった。

当時人口比率は1:9と圧倒的にフォースナイトの方が少なかったため、力を持たぬ者達は誰もが自分たちの圧勝だと思われた。
しかし、フォースナイトはその全身をガードフィールドと呼ばれる気のバリアを張っているため通常兵器が通じず、しかもありとあらゆる毒に対しても体内で瞬時に中和してしまうため通じなかった。
そして最終手段として核ミサイルも用いられたが、その爆発はおろか放射能すら彼らには通じなかった。
すべての武器や兵器が通じない彼らに対し、為す術もない力を持たぬ者達は次第に追いつめられていく。
結果、1年も持たずにフォースナイトの勝利が確定しようとしていた。

そんな中、フォースナイトに力を持たぬ人たちとの共存を願う者達が生まれ始めた。
もともとは同じ人類、フォースナイトもまたその中から生まれたものだと言うのが彼らの主張であった。
ごく少数の意見であったが、それは平和を願う心の叫びでもあった。
その心に感銘を受けた者達が次第に参加し始め、それはまもなくナイト全体の半数を占めるに至る。
相反する意見のぶつかり合いは新たな火種を生んだ。
フォースナイト同士の戦いである。
かつてフォースナイトと力を持たぬ者達との戦いで、都市と呼ばれる物は廃墟と化し荒れ果てた大地は、新たに巻き起こった戦いによってさらに荒野と化していった。
すでに彼らと戦うだけの力を持たぬ者達は、せめて戦いに巻き込まれ無いように片隅でひっそりと生きていくしか無かった。
そしていつ終わるとも知れぬ戦いは五十年以上にも渡った。
総人口は1/10以下となり、人口比は7:3と以前とは逆にフォースナイトの方が多くなっている。
これは戦いの影響もさることながら、かつての戦いで大量の核ミサイルによって世界中にばらまかれた放射能の影響が出ているようだ。

永遠に続くと思われた戦いは一人の少女の登場により終止符が打たれることとなる。
少女の名はセラフィーナ・リーン。
彼女は兄フェイロス・リーンとその友人カイル・アデルと共に戦い続け、その中でたくさんの仲間を得た。
そしてこの戦いを先導する者−カイザーとの最終決戦。
カイザーの居城にて彼のいる所に辿り着くまでに、ここまで来る間に出来た仲間達は次々に倒れていく。
そしてカイザーと対峙出来たのはセラフィーナ、フェイロス、カイルの三人だけであった。
最後の戦いでフェイロスは命を落とし、カイルもまた深い傷を負うこととなる。
だが、二人の力のおかげでセラフィーナはカイザーをうち倒すことが出来た。

戦いは終わり、セラフィーナとカイルは生き残った仲間達と共に世界の復興に力を注ぐ。
その志半ばでカイルは倒れ命を落とす。
しかしセラフィーナに悲しむ暇は無かった。
二人の意志を無駄にしないために、カイザーを倒すために死んでいった者達のために彼女はとにかく前へを進んだ。
途中、彼女は自らが不老不死の者だと言うことに気づくが、それも運命だと受け入れた。
とにかくその時の彼女に立ち止まることは許されなかったのだ。
100年後。
後に光の塔と呼ばれるセントラルパレスを中心とした世界国家を設立した。
そして、セラフィーナは世界に秩序を取り戻すために自ら女王となる。

セラフィーナが女王となって数年が経ち、彼女は前々から考えていた事を実行に移すことにした。
それはカイルが自らの命と引き替えに体内に宿してくれた新たな命の誕生である。
当時、彼女はカイザーとの戦いで卵子を作ること出来ても子供を産めない身体になっていた。
カイルが与えてくれた精子と自分の卵子が受精し受精卵となっても、それは着床することなく死んでいく運命であった。
そこで二人は考え、誕生させることが出来る日が来ることを信じ、受精卵を冷凍保存することにした。
そして今、セラフィーナはその時が来たのだと確信し、人工子宮の中で子供を誕生させた。
またそれに先立って、実験としてカイルのDNAを元に6人の子供を誕生させる。
しかし、7人の子供達にはその出生を伝えることはしなかった。
特別扱いしないため、また自分たちが一人の子供を誕生させるための実験体だと言うことを知らせないために……。
7人の子供達はそれぞれある特定の力を持っていた。
光を操る力を持つシンキ。
闇を操る力を持つマエイ。
火を操る力を持つカエン。
水を操る力を持つスイヒョウ。
地を操る力を持つダイチ。
獣化の能力を持つセイジュウ。
そして、二人の血を引く者……風を操る力を持つセイフウ。
成人後、フォースナイトでも最強の力を持つ7人はセラフィーナを守る近衛騎士−ガ−ディアンナイツに就任する。



→ NEXT


<あとがき>
これは青風誕生以前、彼の母セラフィーナの物語をこの『Wind Saga』その物を青風とエアの二人に絞った話にするために100行弱にまとめたものです。
(このセラフィーナの物語も構成をしてないので分かりませんが、まともにやったらどれだけの話になるか……)
あと青風達の名前が今はカタカナ表記ですが、後に漢字名で名乗ることになります。

しかし……冒頭は某サイキックなゲームと同じなってしまった……。



語彙の簡単な説明

「フォース」
簡単にいえば超能力のようなもの。
またありとあらゆる事象を可能にする力。

「フォースナイト」
フォースを持つ者の総称。
彼らが持つ武器−フォースソードの形状によって、ナイトの部分が変わることもある(ex.フォースガンマン、フォースマジシャン……)
またフォースナイトとは通常兵器による攻撃をガードフィールドと呼ばれる気のバリアで弾き、毒や放射能も体内で中和すつことのできる、新人類でもある。
なお彼らを傷つけることが出来るものは彼らが持つフォースソードのみである。
しかしその再生能力はすさまじいもので、手足ぐらいなら自分の物である限りくっつければ直ってしまうほどである。
このように、そう簡単に死なない者同士が戦うフォース戦争は五十年以上も続くこととなった。

「フォースソード」
フォースナイトが気のエネルギーを武器へと物質変換したもの。
一人につき一つしか発生させることが出来ず、個々によっても形状が異なる(ex.剣、銃、杖、弓……)

「フォース狩り」
中世の魔女狩りに似たところがある。
まだフォースソードやガードフィールドを作り出せないフォースナイト(主に小さな子供)をその場で殺害、または人体実験と称する解剖によって殺害した。
(ソードやフォールドを作れないナイトは普通の人間と変わらないため簡単に殺す事が出来る)
これにより数十万という子供が殺された。
中には関係ない子供もいたらしいが定かではない。
だがこれも後の人口激減の要因であったのは間違いないだろう。