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『MEMORIES』
第7話 『無事でよかった…………』−エア−
私達は買い物の後、ソラさんと別れてシップ最後尾にあるパークエリアに来ていた。
「ねぇエア。ソラさんとナツキさんとの出会いの話、良かったよね」
「そうですね。あれは劇的な出会いというのでしょうか」
「うんうん。そういえば、ソラさんは彼氏が欲しいようなことを言ってたけど、ナツキさんラブなのは見え見えなのにね」
「やっぱりカエデも思いますよね。なんで隠すんでしょうね」
「恥ずかしいから……ってそんなわけ無いよね」
「あははは」
私はカエデとの話ながら、私達の出会いを思い出していた。
それは故郷の星を離れて3年ほど経った頃。
その当時私はハンターズに成り立てで右も左も分からない状態だった。
しかしハンターズになっても危ないことに足を踏み込むことは絶対になかった。
私にそれだけの勇気が無かったから……。
でも両親に先立たれ、生来精神力の高かった私が生きて行くにはフォニュエールとしてハンターズをやるしかなかった。
そしてその日も私は簡単で安全な依頼だけを選んでいた。
そんな時、私が受付をしているカウンターの隣のカウンターで紫色のレイキャシールが騒いでいた。
背丈は私と余り変わらないぐらいの人。
「分かったわよ! 誰かフォースを連れてくれば良いんでしょ!」
その人はそう言うとカウンターを離れようとする。
その様子を横目で見ていた私は巻き込まれたくない一心から目をすぐに逸らした。
目が合えばフォースである私に降りかかってくる気がしたから……。
でも……。
「あなた、シングル?」
その人は私に声をかけてきた。
「あ……はい………」
「それじゃ、一緒に来て」
その人は私の腕を掴むとさっきまでいたカウンターへと連れて行こうとする。
「あ、あの私………」
「何?」
「私、レベルがまだ3だから……その……」
「なんでもフォースがいれば良いだけだから大丈夫」
そう言うと私を強引にカウンターの前へ連れてこられた。
「これで良いでしょ」
その人は受付の人にそう言うと、受付の人は軽く溜め息をついた。
「あなたレベルはいくつなの?」
「私……ですか?」
「そう」
「あの……3……です」
「そう……ちょっと低いけど……カエデさんがその辺をカバーするというなら良いでしょ」
その時初めてこのレイキャシールの名前がカエデさんと言うのだと知った。
「受け付けるから、あなたの名前と登録ナンバーを教えて」
「あ、はい。エア・スターク、登録ナンバー459876321……」
「登録完了。あなた達の端末に依頼データを転送したから頑張ってね」
「はい」
「………はい」
私はカエデさんの後について建物から出た。
「……あの……私……」
「今更キャンセルなんてしないでね。まぁあんたの意志を無視したのは悪いとは思うけど、この依頼結構お金が良いんだ」
「はぁ……」
「心配しなくてもあんたは最後方にいればいいからさ」
それはつまり当てにはしてないといことですよね……と心の中でつぶやく。
まぁ仕方ないんだけど……。
「とにかく、どれぐらいの期間になるかは分からないけどよろしくね。私はカエデ・シュペルター」
「私はエア・スターク……」
私達は簡単な自己紹介を交わす。
それが私とカエデの出会いだった。
「くすくす」
私は思わず吹き出した。
そんな私を隣を歩くカエデは不思議そうな顔で見る。
「いきなり笑ったりしてどうしたの?」
「え……私達が初めて会ったときの事を思い出したんです」
「あ……あ〜〜。あの時の私は……あはははは……」
カエデは照れ笑いを浮かべる。
彼女がそう言う反応を示すのは当然の事かも知れない。
あの時のカエデは自分勝手で他人と協調性を持とうとしないところがあった。
でもそれからも時々一緒にやるようになり、いつしか私達は親友という関係になった。
「まだ笑ってるし……」
まだくすくすと笑う私にカエデが口を尖らせて文句を言う。
「ごめんなさい」
「ま、いいけどね」
すこしすねた口調で言う。
う〜ん、笑いすぎたかな……。
その時私達の行く手を遮るように黒いヒューキャストが姿を現した。
ヒューキャストは大きな鎌を持ち胸に3本の傷がある。
「お前達はナツキ・スライダーに近しい者たちだな」
「だから、なに?」
カエデはいかにもというぐらいにけんか腰な返事をする。
私もそうだけど、すごくやばい相手だと認識してると思う。
「俺がナツキ・スライダーと戦うためにお前達を今ここで倒す」
そう言うが早いが、ヒューキャストはその鎌で私達に斬りかかった。
私達は左右に分かれその攻撃を避けたが、さっきまでいた場所の石のタイルが破壊されていた。
「馬鹿力が!」
カエデがもっともな感想を言うとマシンガンを背中のリボン型収納庫より抜くと乱射する。
「カエデ、ここ公園ですよ!!」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
「それはそうだけど……」
カエデはそう言いながら次々に撃つ。
だけど、ヒューキャストはその全てを鎌で弾くとカエデに迫る。
そして鎌を振り下ろした。
でもカエデはすんでの所で避けると私の元へと来た。
「カエデ、大丈夫?」
「何とかね……でもあいつ、強いよ」
私達はヒューキャストの動きを見ながら言葉を交わす。
「逃げるにも逃げられないし」
「やるしかないでしょ」
「カエデのそう言うところ、心強いです」
私はそう言うと補助テクニックを唱えた。
「シフタ、デバンド!」
「ありがとう」
カエデはマシンガンを撃ちながら、接近するヒューキャストに迫る。
そして私も後方から援護する形でフォイエを連発した。
しかし、敵は私達の攻撃を鎌で軽く受け流す。
そしてゆっくりと確実にこちらに近づいてくる。
前に出ていたカエデも押され初めて徐々にこちらに戻ってくる。
「どうして通じないのよぉ!!」
その時、カエデが石に躓き転んだ。
「!?」
敵はその隙を逃すことなく鎌を振り上げ迫った。
「カエデ!!」
私は駆け出し、カエデを庇うようにその間に入る。
その瞬間、鎌が振り下ろされ私は背中に激しい痛みが走る。
恐らく出血も相当な物だろう……私は立っていることが出来ずそのまま倒れようとした。
「エア〜〜〜〜〜っ!!!!!」
そんな私をカエデが支えてくれた。
「カ……エデ……無事?」
「私のことよりも……」
涙声のカエデを見て無事だと認識した私は笑顔で彼女を見る。
「あなたが……無事でよかった…………」
そこで私の意識はとぎれた。
<あとがき>
絵夢「エアが斬られました」
恵理「ホント、やるときは容赦ないね」
絵夢「それが私のいいところ〜」
恵理「違うって(^^;;」
絵夢「さて次回はエアの復讐に燃えるカエデです」
恵理「果てして敵は取れるのか? そしてナツキ達は間に合うのか?」
絵夢「こうご期待」
恵理「また次回まで」
絵夢「お楽しみに〜」
絵夢&恵理「まったね〜」